
幕末の東北。海坂藩の平侍、片桐宗蔵(永瀬正敏)は、母と妹の志乃、女中のきえ(松たか子)と、貧しくも笑顔の絶えない日々を送っていた。やがて母が亡くなり、志乃ときえは嫁入りしていった。ある日宗蔵は、きえが嫁ぎ先で酷い扱いを受けて寝込んでいることを知り、やつれ果てたきえを背負い連れ帰る。その頃、藩に大事件が起きた。かつて、宗蔵と同じ剣の師範に学んだ狭間弥市郎が、謀反を起こしたのだ。宗蔵は、山奥の牢から逃亡した弥市郎を切るように命じられる・・・。
藤沢周平原作の「隠し剣 鬼の爪」と「雪明かり」を組み合わせてできた作品。
この作品は、一時代に名を残した人物ではなく、平侍である宗蔵を中心として、市井に住む人々の生活が描かれている。哀歓を帯びた彼らの日常が、何気ない会話や所作などによく現れていた。また、藩が戦略として大砲を導入し、藩士たちが近代化の波に翻弄される風景などはユーモラスで、ストーリーの良い緩和となっていた。
物語は、宗蔵ときえの身分違いの恋、家老との確執や狭間弥市郎との因縁等、それらを巧みに絡ませながら、題名でもある秘剣「鬼の爪」へと収束していく。ただ「鬼の爪」に関しては、演出は良いものの設定が活かされておらず、どこか浮いてしまっているように感じた。
幕末という混迷した時代に、愚直に己の信念を貫いて生きる主人公、宗蔵。平侍でありながら家老に楯突き、信念を曲げることがないその姿は、新時代の黎明に失われつつあった侍の姿であろう。淡々と流れるストーリーの中に紡がれるエピソードは、時代に翻弄される宗蔵の葛藤や信念が静かに伝わってくる。趣のある映像は、良質な時代劇のそれであった。
ルーピーQ的評価・・・★★★☆☆三つ星です。
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