2005年04月13日

■血と骨

血と骨.bmp

 1923年。成功を夢見て祖国から大阪へ渡った金俊平(ビートたけし)。朝鮮人集落での裸一貫の船出から、持ち前の腕力と上昇志向で自分の蒲鉾工場を構えるまでにのし上がった俊平だが、並外れた凶暴さと強欲さで悪名も高く、家族までがその存在を怖れていた。俊平の息子・正雄は、父を「頭のおかしいオッサン」と軽蔑しつつ、その巨大さに憧憬とも畏怖ともつかない感情を抱く。そんな折、俊平の息子を名乗る武(オダギリジョー)が現れ、金家に転がり込んで好き勝手に暮らし始める。俊平の存在にびくともしない武の姿に、正雄は羨望の眼差しを注ぐが・・・。 第28回日本アカデミー賞3部門受賞作品。

 梁石日の自伝的小説を映画化したこの作品は、金俊平というあらゆる欲望に対して貪欲な「怪物」に巻き込まれた周囲と、大正から昭和という激動の時代を生きた朝鮮移民の姿を描いた壮絶な物語である。

 暴力によって周囲を支配する父、家庭を支えながらも、俊平の支配から逃れられずに神に縋る母、父から逃れたい一心で望まぬ結婚をするが、母と同じ道を辿る姉、そんな家族の中で育ち、父を嫌悪しつつも次第に似通っていく正雄・・・。金家の描写は過酷の一言に尽きる。負の螺旋とも呼べる源泉には金俊平の存在があり、その生命力と存在感にはただ圧倒された。この凄絶な男を演じられるのは、ビートたけしを措いて他にいないだろう。また鈴木京香も、俊平に翻弄されながらも耐え続けた女性の生涯を熱演し、その確かな演技力を見せていた。

 「血は母から、骨は父から受け継がれる」 登場人物の誰もが、血と骨の呪縛から逃れる事ができない。金家の人々のように「金俊平」という人物に嫌悪感を抱きつつも、最後まで目を離す事ができなかった。壮烈な家族の肖像を描いた力作である。

ルーピーQ的評価・・・★★★☆☆三つ星です。

posted by ルーピーQ at 00:17| 千葉 🌁| Comment(10) | TrackBack(15) | ■映画レビュー -DVD観賞- 2005 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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